臨床実習のヒント

頭頸部の診察

まず病歴を聞いてからの診療第歩は,明室での視診・触診である.
伝染性の強い外眼疾患が否定されれば,視力検査に移る.
そのご暗室に患者を誘導して外眼部・透光体・眼底の順に検査を進めていく.


細隙灯顕微鏡

slit lamp microscope / Spaltlampenmikroskop

①細隙灯顕微鏡所見

眼瞼,結膜,角膜,前房,虹彩,水晶体,硝子体,眼底の観察を行う.
透明組織に対し,スリット状光束の照明(細隙光)を照射すると光学的切片を作ることができる.
細隙光は,透明体に対するTyndall現象の応用である.
電球をグレードアップした細長照明の基本構造は,Gullstrand に依る(1911).

細隙光は斜めに照射し,細隙光の入射角(照明方向)と観察の角度を変えながらジョイスティックで部位を選び,光学的切片を生体顕微鏡で拡大・観察する(通常は,直接法)
観察系は固定焦点であるため,図のように左手で照明系を調節し,右手ではジョイスティックでピント(前後方向)を合わせながら見たい部分に移動する(図はクリックで拡大)
②細隙灯顕微鏡 焦点と照明位置をずらすときは,ランプハウスの固定ネジを緩め照明方向を変える(間接法)

▶ 検査法のいくつか

直接法:観察したい部位に細隙光を当てる,般的な観察法.

  1. 広範()照射法 diffuse illumination 図03
    いわゆるスリット照明ではなく,光束を広げ拡大鏡としての目的で使用.
    全開での光量調節を電圧変化でやろうとすると色温度が変わるため,NDフィルタさらにスリガラスで光を拡散(diffuse)させ全体像を観察する.
  2. 直接焦点照明法/焦点斜照法 direct focal illumination 図04
    スリット幅を狭くすると,いわゆる光学切片となる.
    おおよその照明角度は30°ほどに設定する.

間接法:照明細隙光を偏位させ(ずらして)観察する.

  1. 間接照明法 indirect illumination 図05
    観察したい部位の周囲に光を当てる.次の,反帰・徹照を含めた意味合いになる.
  2. 逆光法あるいは反帰光線法 retroillumination/transillumination
    図07 図06 虹彩に当たった照明が,反射して返ってくる(反帰)光を利用する.反射光により,角膜上皮浮腫や侵入血管の観察に適.
    照明角度を狭く設定し,眼底(特に乳頭部)にまで光を届かせると眼内の赤暗い背景に透光体の混濁が黒いシルエットに観察される(徹照法)
  3. 強膜散乱法 sclerotic scatter illumination 図08
    輪部近くに照明光を当て,角膜内の散乱光により観察する.
    うすい角膜混濁の観察に適.

鏡面法:インピーダンスの異なる組織境界面,光の屈折率が異なる面において細隙光の反射を利用・観察する.

  1. 鏡面反射法 specular reflection 図09
    目標部位に対し角度をとって(例えば60°)斜めから照明し,屈折率の異なる組織境界面からの反射を観察する.鏡のように照明角に致する反射角方向から観察することで鏡面となる.実用になっているのが角膜内皮検査である.

◆そのた

  1. 振揺 図10
    照明光を揺らしながら..
    ということであるが,通常ランプハウスはグラグラブラブラしていることはないのです.

⋘引用図は 眼科MOOK No.3 1978 に拠った⋙

▶▶  前眼部以外の検査では Applanation眼圧計(Goldmann)が付属するほか,特殊なレンズをセットすると眼底の観察ができる.

▶▶▶  その昔,『𨻶』の字だったですよ.いつ変わったんだろ.俗字 ?!

▶▶▶▶Tyndall現象透明物質内に多数の微粒子が分散している場合,光が散乱されるためその通路を観察できる.自然界では・・・

⑪ 朝もや

◆角膜スペキュラマイクロスコープ spacular microscopy 図 補

1.原理
 角膜層構造の境界部での鏡面反射像を観察する.上皮面と内皮面があるが,臨床で重要なのは内皮細胞である.

2.機器
 内皮層の重要性が(再)認識されたのは半世紀ほど遡る.生体での観察が実用化されたのが1970年代となる.当初は般の細隙灯顕微鏡を用いた観察であったが,専用のスコープが普及し現在に至っている.

3.正常所見のパラメータ
①内皮細胞密度(cell density:CD値):中央部で少ない.2,000以下が異常値,400500以下になると透明性が維持できない.単位;細胞数/mm2
②変動係数(細胞面積 coefficient of variant in cell size:CV値):大小不同の程度で,大きさのばらつきを示す.0.35以上が異常値
③六角形細胞の出現(6A)率:正常形状の割合で,形のばらつきや脱落を示す.50以下が異常値.単位 %

§ 眼底検査

細隙灯検査 細隙灯顕微鏡

2020